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化学コラム:リービッヒ冷却管はなぜ下から水を流すか?

投稿日:2019年2月10日 更新日:

以前の記事で、蒸留をはじめとした混合物の分離方法について扱いました。

その中の蒸留操作のところで、なぜリービッヒ冷却器の水を下から上に流すのか書いたと思います。

混合物の分離法とワンポイントまとめ

高校化学ではこの答えとして、「温まった水を効率よく排出するため」でよいのですが、今回はコラムとしてこの内容を少し掘り下げてみたいと思います。

なぜ水を下から流すのか?高校化学的イメージ

高校化学的な考え方でこの理由を分かりやすく考えてみましょう。

リービッヒ冷却管のは二重管構造になっており、内部を分離したい成分の蒸気が、外部を水が流れます。

そのため、高温の蒸気と低温の水との間で熱が交換され、水はぬるくなり、蒸気は冷えて液体へと凝縮されるのです。

 

ここで少し頭の体操です。もし、温かい水と冷たい水を容器に入れ、混ぜなかったら温度の分布はどうなるでしょうか

答えは、温かい水が上に、冷たい水が下にきます。

なぜかというと、冷たい水の方が、温かい水より密度が高くなる性質がある(つまり温かい水の方が軽い!)からです。

日常でこの現象を考えると、一昔前の自動給湯器がない時代では、お風呂を入れるとき最初は水しか出てこず、後でお湯が出てくることが多かったため、

お風呂に足をつけた瞬間は温かいと思っても、いざ入ってみると下の方は水でとても寒い思いをする、なんてことがありました。

お風呂での失敗例

また、温かいものが冷たいものより上に行く性質は水に限ったことではなく、例えば空気についてもいえることです。

暖房をつけても足元は寒いままで、天井ばかり温かくなる、ということはこの典型例といえるでしょう。

天井の高い部屋などで、上にたまった温かい空気を循環させるために使われるファン。

 

どうして湖は上だけ凍るの?

皆さんは、冬の時期に湖が表面だけ凍っている様子を見たことがありますか?ここまでの解説では、冷たいものは密度が大きく重くなり、下の方に行くと説明しました。この理屈でいうと、湖が凍るときも一番下から凍っていくように思えます。

実は、水は他の典型的な物質と異なり、4℃で密度が一番大きくなります。この知識は高校化学でもたまに出題されます

なぜ水が4℃で密度が最大になるかというと、これは水の構造の特異性に起因しています(水素結合などを既に習った人向けに書いてます)。

通常の物質であれば、温度が低いほど分子が熱運動をしにくくなるので密度は大きくなっていくのですが、

水分子の場合はある0℃付近になってくると水素結合の形成が起こり始め、空間ができやすくなるため、逆に密度は小さくなります。

その結果、熱運動による効果と水素結合の効果が重なって、ちょうど一番密度が大きくなる場所が4℃付近なのです。

これを日常の出来事で考えてみると、冬場の凍った湖が挙げられます。

湖の表面は氷に覆われていて、表面付近の液体の水ももちろん0℃付近になっています。

しかし、上記のように水の密度は4℃で最大なので、湖底の水温は4℃付近になっています。

これが、湖面が凍った湖でもワカサギなどの魚が湖底で生きていける理由なのです。

 

少し脱線してしまいましたが、リービッヒ冷却器で水を下から上に流す理由を、上記を基にして考えると次のようになります。

つまり、温かい水は基本的に上に行く性質を持っているので、上から冷水を流しても、下に流れ落ちていくのも冷水なので、温かい水はいつまでたっても排出されないということです。

これが最初に述べた理由「温まった水を効率よく排出するため」になっています。

 

高校では教えられない本当の理由

ここからが本題です。実は上記の理由だけではなぜ下から上に流すのかを十分に説明できていません。

本当は大きく分けてさらに2つ、化学的な深い理由があります。

教科書には載っていない理由①-管内の気泡除去-

まず第一に、リービッヒ冷却管では高温の蒸気を冷やすため、二重管の内壁に気体が付着することがよくあり、この部分は水による冷却効果を受けることができません。

そして気体が何かの拍子に外れると、水による冷却効果を一気に受けるため、ガラスに大きな負荷がかかり、最悪の場合割れてしまいます

したがって、内壁にできた気泡はすぐに除去する必要があるのですが、上から水を流すと(気泡は上に行きたいのに)流れのせいでとどまってしまうんですね。

そのため、通常は下から水を流すことで、生成してしまった気泡ごと上側に抜けるようにしてあります。

リービッヒ冷却管

 

教科書には載っていない理由②-並流と向流の冷却効果-

二つ目の理由は流れの方向による冷却効果の違いです。

これは大学レベル以上の話になるのですが、例えば次の図のとおり内管に高温の油を、外管に冷水を流した場合を考えてみましょう。

 

向流と並流

 

上の図で、左のように高温流体と低温流体を同じ向きに流すものを並流、逆向きに流すものを向流と言います。

リービッヒ冷却器で下から流す場合には向流になっていることが分かるでしょうか。

実はこの並流と向流だと、向流の方が熱を交換する効率(つまり冷却効率)が高いことが化学的に証明されています

なぜ向流の方がよいか、というのはかなりマニアックな分野になるので省略しますが、工場などでは効率が良いことから向流式にすることがほとんどです。

リービッヒ冷却管の水を下から流すという行為一つとってみても、様々な化学的な要因が絡んでいることが分かったと思います。

個人的には、こういうところに化学の面白さが凝縮されているのかなと考えています。

まとめ

今日のまとめ

  • 温かいものは密度が低く軽いので、上に行く性質がある!
  • リービッヒ冷却器で下から水を流すのには、教科書に書かれていない重要な理由が隠れている

 

 

-化学
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